遠くへ行きたい

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時おり、「遠くへ行きたい」と思う。

そう思うのだけれども普通は、遠くへ行きたくても簡単に遠くへは行けない。
自由業と呼ばれる仕事をしている僕だって、思い立ってすぐ遠くへなどいけない。

子供の頃、日曜日の朝だったろうか、「遠くへ行きたい」というテレビ番組をよく見ていた。

永六輔や渡辺文雄や、みなみらんぼうなんかが日本の各地を旅する番組だ。
番組は、「遠くへ行きたい」と言っておきながら、タレントがすでに遠くへと行っている場面から始まる。

「もう行ってるベさ!」

と、日曜日のたびに北海道の小さな街で、少年クドウは思ったのですが、僕はその番組が好きだった。

なにかテーマのようなものがあるわけでも、ストーリーがあるわけでもないその番組を、夢中になってみていた。
あとになって、その番組はテレビマンユニオンという会社が作っているのを知り、そしてこの会社が作るテレビ番組(最近だと「サラメシ」とか)には、おもしろいものが多いということを知った。

僕が今でも時々遠くへ行きたくなるのは、この番組のせいだろうなと、なんとなく思っていたのだけれど、ホントの所はどうなのだろう。

僕はどうして、遠くへ行きたくなるのだろうか。

恐らく、こんなタイトルの番組が今でも続いていることから、世の中の人は僕と同じく、ふと遠くへ行きたくなるのではないかと推察する。
であれば、人はどうして遠くへと行きたくなるのか。

自分で稼いだ金でメシを食うようになって以来、僕はこの「遠くへ行きたい」という気持ちは、仕事からの逃避に違いないと思っていた。

今置かれている現実から逃げ出したい、どうにかして仕事から逃れたい。
そういう気持ちが、遠くへ行きたいという願望として表れているのだと理解していた。

でも、そういう気持ちで遠くへ行くと、そこにいるのは多くの場合、仕事をリタイアしたお年寄りだったりするわけである。

遠くへ行くのには、さまざまなリスクがある。

遠くへ行けばお金がかかるし、遠くへ行けば何らかの事故に遭う可能性もあるし、遠くへ行けば体調を崩しやすくなったりもする。
そういうことを考えると、家でじっとしているのがいいに決まっている。

けれども、人は遠くへ行く。

仕事をしたくないという理由で旅に出るのであれば、仕事のない年寄りたちが春の京都や秋の日光へと大挙して繰り出すことへの説明がつかない。

僕は仕事を逃げ出して旅行をし、訪れた先で仕事もないのに旅行をしている人を見て、悶々とするのである。

君たちはなぜ旅をするのかと。

老人たちが旅に出る理由を、あれこれと考えてみるが、答えは出ない。

その答えが出る頃には、きっと僕は年老いているのだろう。

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