役割を見なおす

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昨年だったろうか、盲腸の持つ本来の役割が解明されたというニュースが話題になった。

これまで盲腸、学術的にいうところの虫垂は「特に役割のない臓器」と考えられており、炎症を起こすと切除されてしまうことも多かった。
ところが、虫垂には大腸における腸内細菌叢のバランスを維持するための細胞を生産する役割があるということが、大阪大学の研究グループによって明らかになったのだ。
考えてみれば、人間の体に不要な器官があるのは不自然なことであり、研究者たちの努力によって未知の役割が解明されたことは、人類にとって大きな発見だと言えるだろう。

話は変わるが、気仙沼湾では昭和40年代から赤潮が多発し、その影響で特産品の養殖カキが大打撃を受けた。

赤潮プランクトンを吸ったカキは、身が赤く染まってしまい、「血カキ」と呼ばれて売り物にならなくなってしまったのだ。
そこでカキ養殖に携わる人たちが何をしたのかというと、森に木を植え始めた。
森の木が伐採されると、川に流れ込む養分が減り、それによって植物プランクトンが減少したことが、赤潮の発生につながっていると考えたのである。
植林作業は実を結び、気仙沼のカキは再び命を吹き返した。
カキと森林、一見何のつながりのないようなものが、密接に関係している。
物事には目に見えない役割というものが存在しているということを示す好例だと言えよう。

さて、もう一度話は変わるのだが、iPadの画面がいつも汚いということに気づいた。

画面を触って操作した時の指の跡が、たくさん残っていて、光の加減によってはとても不潔に見える。
自分で使う分にはかまわないが、仕事の打合せなどで他人に見せるには見栄えが悪いので、時々きれいに画面を拭いている。

けれども、同じように画面を触って操作しているiPhoneは、画面がさほど汚れていない。
もちろん多少汚れはするが、iPadほど「いつも指の跡でべたべた」ということはない。

なぜだろうといろいろ考えて過ごしていたのだが、ある日気づいた。

それはポケットのおかげだと。

僕の場合、iPhoneはいつもズボンのポケットに入れている。
外出すると、何度もiPhoneをポケットから出し入れする。
その際に、ポケットの内側が画面を自動的に掃除してくれているのだ。
つまり、iPhoneにとってポケットは、カキを育てる森の役割を果たしているということになる。
これまで顧みられることのなかった、ポケットの役割。
人類はスマートフォンを手に入れることにより、われわれが知らなかったポケットの役割に、気づくことができたのである。

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