伊豆方面へ電車で旅行するとしよう。
東京からだと、新幹線で熱海へ、あるいは踊り子号で修善寺へ、ロマンスカーで箱根を回って伊東へという選択肢もある。
けれども、「旅情」というものを求めるのであれば、東海道本線の在来線を使い、のんびりと海を見ながら、というのもいいだろう。
通学の女子高生のおしゃべりや地元のおばちゃん同士の会話を聞きながら、変わりゆく車窓の風景を眺める。
電車がホームに入ってドアが開くたび、都会の湿った空気から海沿いの乾いた潮風に変わっていくのを感じながらの旅は、贅沢以外の何物でもない。
ホンダ・アクティは、例えるならそういったクルマだ。
各駅停車で「移動する喜び」を味わいながらの旅。アクティはそれに似ている。
自動車メディアの仕事をしている関係で、最新の高性能車を運転する機会も多いが、アクティにはメルセデス・ベンツやポルシェ、フェラーリにはない魅力が確かに存在している。
アクティは遅い。
高速道路での快適な巡航速度は90km/h程度だ。出そうと思えば100km/h+も可能だが、それでは心地よくない。
心地よくないというのは、乗り心地や直進安定性、騒音などももちろん心地よくないのだが、それよりももっと心地よくないのが、「急いでいる自分」に気づいてしまうことである。
「ああ俺、急いじゃってるな」と、背後でうなりを上げるエンジンに気づかされる。「もっとペースを落として、気楽にいこうよ」とミッドシップにマウントされた直列3気筒660cc、38ps/5.5kgmのE07A型エンジンは、汗をかきながら6000rpmの金属音で僕にそう伝えるのだ。
少し右足の力を抜いてやれば、「そうそう、その調子」とエンジンは僕とビートを共有し、約0.8トンのアクティが気持ちよく前へ前へと進んでゆく。
高速を降り、アクティがよく似合う田舎道へ入ると、このクルマは俄然魅力を増す。
ATのセレクターレバーを「2」に固定し、緩やかなアップダウンをくり返す県道を走らせると、僕とアクティの息がぴったりと合う瞬間がやってくる。
登り坂ではさすがにパワー不足だが、平坦なワインディングロードでは、ノンパワーアシストのステアリングと、車体中央に位置するエンジンのおかげで、決してスポーティーとはいえないながらも、とても気持ちのいいドライビングを楽しむことができる。
ステアリングを深く切ればグラリとロールし、路面に段差があればそれをお尻に伝え、ほんの少しでも上り勾配がやってくれば右足に力を込めなければならない。
けれども、それが実に気持ちいいのだ。
アクティが僕に「あるがまま」を伝えるので、僕も「あるがまま」でいられる。
結局のところ、道具というのは「気持ちよさ」なのではないかと思う。
最新のポルシェも、評判の高いアウディも、最終的には運転する人が気持ちいいかどうかなのではないだろうか。
もちろん、最新のクルマはとても気持ちいいが、アクティだって気持ちがいい。
『ドン・キホーテ』のロシナンテが、時にはサラブレッドにも勝る活躍をするように、アクティだってやつらに、決して負けてはいないのだ。
伊豆へ旅行するのに、新幹線は速くて、踊り子号は快適で、ロマンスカーは豪華かもしれないが、鈍行の旅だって、ちゃんと気持ちいいのである。
なんて書いていたら、アクティを売るのが惜しくなってしまったが、売ります、アクティ。
なぜか突然妻が「ロードスターに乗りたいからAT免許の限定解除に行く！」と言いだしまして、初代ロードスターを購入することになりました。
いくら維持費が安いアクティとはいえ、2台所有はメトロポリタンシティーTOKYO住まいのわが家にとって駐車場代が負担になりすぎるので、やむなく売却することになりました。
売却するのはホンダ・アクティ。平成2年式でHH3型。トランスミッションは3段AT。
走行距離は158,738km（日常使用しているので若干伸びます）。車検は平成28年3月までとたっぷり20カ月残っています。
前回の車検では、マフラーを純正同等品の新品と交換。破損しやすいステアリングブーツも新品交換済みです。
バッテリーも今年（2014年）の5月に新品交換済みです。
タイミングベルトは135,785km時点で前オーナーが交換済みなので当面は大丈夫そうです。
3000kmごとにオイル交換していますが、引き渡し前にもう一度エレメント交換込みのオイル交換をいたします。
エアコンもバッチリ効いて夏の都内渋滞時でも水温は安定しています。
前々オーナーが板金塗装工場だったとのことで、「まかない塗装」ではありますが、再塗装済みです。この年式のアクティにしては、外観はキレイな方だと思います。
現状の不具合ですが、始動時に燃調がやや不良のようで、暖機せずに走りだすと、たまにエンストします。キャブレターの清掃、あるいはオーバーホールで解決するかもしれません。
内装に、一部退色や汚れなどがあります。20年以上前の軽自動車なので、まあこんなものでしょう。
トリップメーターのリセットがたまに効かなくなります。ゼロに戻るまで、なんどか押す必要がある場合があります。
エンジンマウントブッシュがそろそろ寿命なようなので、長くお乗りになるなら交換した方がいいかもしれません。
古いクルマ定番の症状として、じんわりとオイル漏れがありますが、前回の車検はこの状態で通りました。気になる方は購入後の対策をお勧めします。
燃費は街乗りで約12km/リッター程度。高速道路で飛ばすと悪化しますが、適度なペースを守ると14km/リッター近くまで伸びます。
現在装着中のタイヤは、ブリヂストンのSNEAKERで155/65R13。インチアップした13インチの社外ホイールを組み合わせています。
今年2月に購入し、数百kmのみ走行したほぼ新品のスタッドレスタイヤ、ダンロップDSV-01 145R12 6PRを純正ホイール付きで4本オマケいたします。
次回車検の際は、このタイヤで対応可能です。
写真のように、荷物はこれでもかというほど積めます。
引越の際はとても役に立ちました。
キャンプ道具を積んでも大人4人が快適に（かどうかはわかりませんが）移動できます。
といったように、距離は走っていますが、まだまだいけそうな感じのアクティです。
僕自身、あと4年は乗るつもりでいましたので、それを見越したメンテナンスをしておりました。
ただ、古いクルマですので、いつなにがあるかわかりません。その辺はご理解ください。
実はこのクルマ、3万円で譲り受けたのですが、車検取得やそれに伴う整備、タイヤなどパーツの購入がありますので、同額の3万円からオークションスタートとさせていただきました。
ヤフオク！に出品しましたので、ご興味のある方はぜひ。
質問などもヤフオク！からお願いいたします。
