むすこがもうすぐ2歳3カ月になる。
最近では言葉も増え、「昨日バス乗った」「さっき飛行機見た」というような、時間の概念を伴う会話もできるようになってきた。
保育園のおやつに出た牛乳寒天がおいしかったなどという報告もしてくれる。
発音もかなり上達していて、大人が発した「冷凍食品」「ワンデーアキュビュー」など、かなり複雑な言葉もそのままオウム返しする。
しかし、「愛してる」とは言ってくれない。
僕はむすこを愛している。
この事実に僕は驚いている。
愛しているという感覚がどのようなものか、僕はよく知らなかった。
セックスの時にだけ口にする、親密さを鼓舞するかけ声みたいなものだと思っていたのだ。
しかし、むすこと生活するようになり、愛するとはどういう心の働きのことを指すのか知った。
なるほど、愛してるってこういうことか。
なので、僕はむすこに「愛してる」と積極的に言っている。
僕が愛するとはどういうことかよく知らなかったのは、誰も僕に愛してると言わなかったせいもあるなと思ったからだ。
だから毎晩寝る前に「愛してるよ」と声をかけている。
愛を伝えているわけだ。
だがしかし、むすこはまだ「愛してるよ」と返してくれない。
なんでも上手にオウム返しするのに、「愛してるよ」だけは言ってくれないのだ。
もちろん、愛してると言って欲しくて声をかけているわけではないが、やはりそう返してもらいたい。
やはり、愛というのは抽象的で形もなく、素直に理解しにくいものだから言葉にできないのだろうか。
なんか野島伸司みたいな話になってきたが、とにかくむすこは「愛してるよ」とまだ言えない。
ところが先日、僕の「愛してるよ」の言葉に反応を示した。
彼は僕に「アイテスルヨ」と答えたのだ。
「相手するよ」
確かに、そうだ。愛とは誰かの心の相手をすることかもしれない。
ジョン・レノンもそう歌っていた。
いや、歌っていないか。
はい、歌っていません。
どっちでもいい。
愛に正解などないのだから。
ともかく僕は、彼を愛している。