大変ひさしぶりに、飲み屋で飲んだ。
いつ以来なのか思い出せないくらいにひさしぶりだ。
今年の2月くらいに、家族でチェーンの焼き鳥屋に行ったが、それ以来だろうか。
すでにコロナ禍の前、子供が家族に加わってからは飲み屋で飲む機会が大きく減っていたが、それでもこんなに長期間飲み屋を訪れなかったのは、成人して以来始めてだ。
ひさしぶりに飲み屋で飲んで感じたのは「そんなにいいもんじゃないな」ということだ。
以前は店に入ってカウンターに腰を下ろすと、飲み屋の雰囲気に身体がすっと溶けていくような感覚があったが、今日は違う。どうも落ち着かない。もちろん感染症への漠とした不安から来る落ち着かなさもあるし、ひさしぶりだというのもあるだろうが、それとは違うなにか不和がある。
店と自分とのあいだに、しっくりこない違和感のようなものが生じている気がするのだ。
感染対策による店の席数や備品の変化が、想像以上に影響しているのか。
これがニューノーマルで、やはりわれわれは新しい常識の中を生きていかなければならないのか。
そんなことを考えながら酒を飲み干し、早くステイホームしようと立ち上がったら、座っていたイスの上におしぼりが置かれているのに気づいた。
カウンターに用意されていたものを、座るときにうっかり落としてしまったのだろう。
俺はこのおしぼりの上に座っていたのだ。
違和感はこれだ。
おしぼりだ。