あいさつの話

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仕事で週に2、3度立ち寄るビルの近くに、いつも同じ人が座っているベンチがある。
その人はおそらく路上で生活をしている様子で、うつむき加減でベンチに浅く腰掛けている。
かれこれ1年半くらいはこのベンチに座ってるのではないだろうか。

写真は本文とは関係のないハンバーグとナポリタン。

写真は本文とは関係のないハンバーグとナポリタン。

ある日、その場所を通るとその人はベンチの前に立っていて、ときおりおじぎをしていた。
「おはようございます」
ごく小さな声だけれども、そう言っているのが聞こえた。
朝のあいさつをしているようだ。

あいさつは、その人の前を誰かが通り過ぎるたびに行われているが、通り過ぎる人を呼び止めるようにではなく、かといって人通りと無関係に繰り返されているでもなく、うまく距離感を保ってなされていて、多くの人がつられて会釈をし、僕もおはようございますと返した。

その人はきっと、接客業のような仕事をしたことがあるのではないかなと思った。
そういう感じの振る舞いだった。

数日をおいてその場所を訪れたら、その人はいなくなっていた。

ただベンチがあった。

あの人と、またどこかで会えるだろうか。

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